"優しい教室で震える息子" 第11話
あなたが悪くないことも、お父さんがちゃんと働いていることも分かった。だからもう、あんなレシート受け取らなくていいのよ。お母さんが全部、綺麗にしてあげるから」
優しく言い聞かせようとする私の言葉に、蓮は狂ったように首を振り、のに突っ伏すようにして座した。
「頼むから、かないで……! お母さんがそんなことしたら、僕、本当に学にいられなくなる!」
雅史が慌てて駆け寄り、蓮の肩を抱き起こそうとした。 「蓮、つんだ。父さんが悪かった。父さんがけない姿を見せたせいで、おにそんないを……」
「お父さんは関係ない!」
蓮は父親のを激しく振り払った。 その目から、粒の涙がボロボロと溢れ落ちていた。
「お母さんたちが学にって、『うちはおがあります』『お父さんはクビになっていません』なんて言ったら……みんな、どううか分かる!? 悠や、蒼太君や、クラスのみんなが、僕をどんな目で見るか分かるの!?」
息が詰まりそうな叫びだった。
「みんな、僕を助けるために、自分のお遣いをしてくれたんだよ! 欲しかったガチャガチャもして、買いいもして、僕のために百円を持ってきてくれたんだ! 先だって、『組は最のクラスだ』って、みんなを褒めてくれたんだ!」
蓮は自分の胸を拳で激しく叩いた。
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ドス、ドスと、鈍い音が響く。
「それなのに……『本当はおがありました』『嘘でした』なんて言ったら、僕はみんなの優しさを踏みにじった嘘つきになるじゃないか! みんなを騙して、ヶもタダ飯をっていた詐欺師になるじゃないか!」
私は息を呑んだ。 言葉が、喉の奥で凍りついた。
そうだ。 蓮が恐れていたのは、「貧乏だとわれること」ではなかった。 「善で助けてくれたクラス全員を、裏切った悪魔にされること」だったのだ。
「……蓮」 「言えるわけないじゃないか……! 毎、みんながすごく優しい目で僕を見るんだ。『蓮君、今の分、僕がしたからね』『慮しないで美しくべてね』って、みんなすごく誇らしそうな顔で笑うんだよ!」
蓮は畳を掻きむしりながら、嗚咽の混じった声で絞りした。
「その顔を見るたびに、僕、喉が詰まりそうになるんだ……。カレーも、ハンバーグも、が全然しなくて、砂を噛んでるみたいで……。でも、残したらみんながしむから、全部み込んで、『ありがとう』って笑うしかなかったんだよ……!」
歳のが、で耐え続けてきた獄のさが、私の胸を押し潰した。
施しを受ける側には、拒否権がない。 拒絶すれば、相の善を否定することになる。 相が差し伸べてきた「温かい」を払いのければ、払いのけた側が悪者になる。 だから蓮は、笑って受け取り続けるしかなかったのだ。
自分が「な者」という台装置であり続けることでしか、教のの平を保つことができなかったのだ。
「もう……限界なんだよ……」
蓮はに額を擦り付け、々しく呟いた。
「、学にったら、次は席番号番の番なんだ……。誰が僕におを恵んでくれるのか、もう考えたくない……。でも、やめてって言ったら、みんな僕を責めるんだ……『せっかく助けてあげてるのに』って……僕を、軽蔑するんだ……!」
暗のような絶望が、リビングを満たしていた。
善という名の、逃げのない檻。 息子はその檻ので、ヶ、笑顔で窒息し続けていた。
私はテーブルのの枚のレシートを見つめた。 その片の枚枚に宿る、無邪気で、残酷で、おぞましいまでの「正義」。
私は震えるで蓮のを抱き寄せ、そのたい頬を自分の胸にく押し当てた。 涙はなかった。 ただ、胸の奥底で、ドス黒い炎のようなりが、静かに、けれど決定な量を持って燃えがっていた。
子供たちを責めることはできない? 善だから傷つけてはならない?
ふざけるな。
息子の尊厳をここまで踏みにじり、窒息寸まで追い詰めておいて、何が「奇跡の美談」だ。 何が「いやりの教育」だ。
私は蓮の震える背を抱きしめながら、徹な決を固めていた。
ただおを返してをげるだけでは済まさない。
息子のを玩具にして、自分たちの徳を満たしていたあの教の「偽善の構造」