"優しい教室で震える息子" 第3話
武田先は、瞬だけ言いにくそうに線を泳がせた。 だがすぐに、慈に満ちた表を作って声を潜めた。
「お母さん。ご庭のご事については、私もくは詮索しないようにしています。ただ……子どもたちっていうのは、がっている以に純粋で、敏なんですよ。困っている友達がいたら、自然とを差し伸べう。そういう美しいの育ちを、私は担任として誇らしく見守っているんです」
話が全く噛みわなかった。 ご庭の事? 困っている友達?
「先、何の話ですか? うちの庭が、何か?」 「あ、いえいえ! 責めているわけじゃないんです! 誰にだってにはもあればもありますから。お母さんもお仕事をされていて変でしょうが、学では蓮君をみんなでしっかり支えていますから、どうぞしてください」
武田先は爽やかにそう締めくくると、チャイムの音にわせてちがった。
「次の授業がありますので、これで。蓮君には、無理せずゆっくり休んで、元気になったらまたみんなの輪に戻っておいでと伝えてください」
職員をる私の取りは、来るよりも遥かにくなっていた。
するどころか、胃の底に鉛を流し込まれたような苦しい吐き気だけが残っていた。 武田先は何つ嘘をついていないようだった。
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暴力もない。暴言もない。仲れもない。 学の公式記録、組は「美しいいやりに満ちた理な学級」だった。
では、あの蓮の怯えは体何なのだ。 「かないで」「何も言わないで」と泣き叫んだ息子の姿と、先が誇らしげに語る「みんなにされている蓮君」という像が、どうしてもならなかった。
自宅に戻ると、のは静まり返っていた。 蓮の部を覗くと、掛け布団の隙から規則正しい寝息が聞こえていた。 泣き疲れて眠ってしまったらしい。 汗で額に張り付いた髪をそっと払ってやると、蓮は微かに眉をひそめたが、目を覚ますことはなかった。
何かが起きている。 の目の届かない、けれど教のでは公然の事実として共されている何かが。
私はを決して、蓮の部の捜索を始めた。 普段なら、子供のプライバシーを侵害するような真似は決してしない。机の引きしをけることすら躊躇われる。 だが、今の蓮の様子は、そんな倫理観を優先していられる状況ではなかった。
机のには、丁寧に揃えられた教科とノート。 国語のノートをいてみる。端に落きはなく、赤ペンで綺麗に丸がつけられている。 算数のドリルにも、誰かに破られたような跡や、悪をき殴られた痕跡はない。 箱のも揃っている。
鉛はきちんと削られ、消しゴムが千切られたりもしていない。
机の引きし、本棚、クローゼット。 どこを見ても、いじめの証拠らしきものは何つ見当たらなかった。
残るは、部の隅に置かれたランドセルだけだった。
使い続け、し型崩れした紺のランドセル。 かぶせをけ、教科の入っていないメインの収納スペースにを入れる。底板を指先でなぞった、わずかな違があった。
プラスチックの底板が、ほんの数ミリだけ浮いていた。
本来ならランドセルの底にぴったりと張り付いているはずの敷板だ。 爪を引っ掛けて持ちげてみると、その——衝撃を吸収するためのいスポンジと底板ののわずかな隙に、何かが挟み込まれていた。
それは、つ折りにされた枚の封筒だった。
黄い、らしいひまわりのイラストが印刷されたさなポチ袋サイズの封筒。 文具で売っているような、子供が使う謝袋やお遣い袋の類だ。
指先でつまみげると、ずっしりとしたみがあった。 垢で端がし黒ずみ、何度も何度もけ閉めされたように折り目が擦り切れている。
私は唾をみ込み、封筒のをけた。
に入っていたのは、でも、脅迫文でも、おでもなかった。
のレシートだった。
い、のひらに収まるほどの方形の片が、信じられないほど几帳面に、端と端を完璧に揃えてねられていた。
番のを指でつまんで引きす。