"五人の元彼と三万一千円" 第9話
僕が邪を引いて寝込んだとき、ポカリスエットを買ってきてくれた君に「ありがとう」と言ったら、君は「にお茶をもらったお返しです」と言った。
あのの絶望を、君は覚えているか?
僕は君と、ととしての関係を築きたかった。でも君は、常に僕とのに見えない貸借対照表を置いて、円でも貸しを作らないように必で僕を拒絶していた。
この万千百円を受け取ったら、僕は本当に、君から「体とを担保にしてを巻きげたクソ野郎」になってしまう。
そんな侮辱には耐えられない。
は返す。君の結婚を祝う気にはなれないが、君がこれ以、誰にも見えない借に怯えてきないことを願ってはいる。
藤田拓』
通目。松本裕也。
物静かで、いつも私の顔を伺うように優しかった、つの先輩。
質なの便箋に、細いペン先で丁寧に綴られていた。
『千里さんへ。
ご結婚、よりお祝い申しげます。
お、確かに座に入されていました。通を見たとき、千里さんのあのしそうな横顔をいしました。
僕と付きってくれていた頃、千里さんはいつも何かに怯えているようでした。僕が何かをプレゼントしようとすると、まるで毒蛇でも見るような目でを引っ込めていましたね。
僕のし方が未熟で、千里さんの抱えていた恐怖を解いてあげられなかったこと、今でも申し訳なくっています。
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でも千里さん、あの事の夜、僕たちはおを「貸した」のではありません。
あの夜、泣いていたあなたに差ししたのは、歳の器用な男たちが持ち寄った、ただの「祈り」でした。あなたがもう度笑って、を向いてきていけるようにという、見返りのない祈りだったんです。
祈りを、おで返さないでください。
どうかこのおをご祝儀として受け取ってください。そして、今から始まるしいでは、誰かにされることを、無条件で自分に許してあげてください。
松本裕也』
そして、最の通。
林直。
サークルで私の学輩だった男の子。社会になって再会し、番最まで私の「呪縛」に付きってくれた。
ホテルのメモ用に、りきされていた。
『千里先輩へ。
結婚式、おめでとうございます。
座の細を見て、全部察しました。先輩、まだあのの全員に、同じことやってるんですよね。
先輩が僕と別れるとき、「今までごちそうになった分です」って、万円入りの封筒を机に置いて逃げたのこと、僕は忘れません。あの封筒を見たとき、僕は自分がの男として、先輩にこれっぽっちも信用されていなかったんだと悟って、で泣きました。
先輩はいつも「借りを作りたくない」と言っていたけれど、本当は「誰も信じたくない」
だけだったんじゃないですか?
誰かに借りを作るということは、相を信じて、自分のさを預けることのはずです。先輩は傷つくのが怖くて、裏切られるのが怖くて、全部おで清算して、最初から誰ものに入れないように壁を作っていただけです。
この万千百円は返します。
僕たちは、示しわせてこれを送ったわけじゃありません。でも、僕がこれを返す理由はつだけです。
先輩、今の旦さんにも、同じことをするつもりですか?
旦さんとの活も、そうやってノートに円単位で記録して、「私はあなたに借りはありません」って顔をしてきていくんですか?
もしそうなら、旦さんがです。
お願いですから、もう自分を許してあげてください。誰も先輩を責めていません。先輩を責めているのは、先輩自だけです。
林直』
が、私のからハラハラと零れ落ちた。
ドレッサーのガラスのに、通のと、散らばった幣と貨が転がっている。
部のは、完全な沈黙に包まれていた。
。
お互いに連絡先もらず、示しわせたわけでもないの男たち。
彼らはそれぞれ、くれた別ので、私の勝な振込通を受け取り、そして全く同じ結論に達したのだ。
『これは借ではない』
『私たちの過を、銭の清算にするな』
彼らは私に復讐しに来たんじゃない。