"五人の元彼と三万一千円" 第4話
「先週、のリビングのテーブルのに、君の通帳とこの細が瞬だけ置きっぱなしになっていたのを見たんだ。君が慌てて引きしに仕い込んだから、あえて聞かなかった。結婚の個な貯の理だとったからね」
俊平は枚の細票を扇のように広げ、ドレッサーのガラスのに叩きつけるように置いた。
枚の片に印字された、振込先と額。
ササキ ケンタ 31,480円 タカハシ リョウスケ 31,480円 フジタ タクミ 31,480円 マツモト ユウヤ 31,480円 コバヤシ ナオキ 31,480円
枚とも、完全に致する額。
そして、今朝届いたつのご祝儀袋に入っていた額と、円の狂いもなく同じだった。
「君が……振り込んだんだな」
俊平の声から、温度が完全に消えていた。
「週、君はこのの座に、それぞれ万千百円を振り込んだ。そして今、そのが、そっくりそのまま同じ額を、のし袋に入れて君に送り返してきた」
俊平はドレッサーにをつき、私を見ろした。
その目は、もはやする嫁を見る目ではなかった。会社の会議で、な横領や背任を犯した社員を取り調べるの、徹な監査役の目だった。
「どういうことだ、千里。この男たちは誰なんだ」
「……」
「君は結婚の直に、男たちにを配っていたのか? 切れか? それとも、過の借の返済か? なぜ全員が同じ額なんだ。
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なぜ今、この結婚式のに送り返してくる?」
「切れなんかじゃないわ……!」
私は両で顔を覆った。
指の隙から、たい涙がこぼれ落ちそうになるのを必で耐えた。メイクを崩すわけにはいかない。あと分で、には親族が集まってくる。両親が、親戚が、俊平の族が、笑顔で私たちのれ姿を待っているのだ。
「じゃあ何なんだ! 説してくれ!」
俊平が初めて、く鋭い声でりをわにした。
「の男から、結婚式の当に同じ額の気なご祝儀が届いて、婦はそれを僕に隠して庫に放り込もうとした。これで僕に『何も聞かずにバージンロードを歩け』とでも言うのか? 僕が何もらないまま、笑顔で誓いのキスをしろとでも言うのか!」
俊平の胸が激しくしていた。
彼は首の計に目を落とした。無な秒針が、カチカチと音をててんでいる。
分。
親族紹介まで、あと分。
「千里、言えないなら、今の式は延期する」
「……え?」
「今すぐプランナーを呼んで、挙式を断させる。親族や招待客には、婦の急病とでも説するよ。原因も分からない銭トラブルを抱えたまま、君と入籍するわけにはいかない」
「待って……待って、俊平さん、お願い!」
私はたまらずちがり、俊平のタキシードの袖にすがりついた。
シルクのを指先が掴む。
彼がわずかにを引いた。その拒絶の触が、刃物のように私の胸を抉った。
もう、逃げられない。
私はこの、ずっと逃げ続けてきたのだ。
誰かに何かをしてもらうことの恐怖から。
借りを抱えたままきていくことの息苦しさから。
誰かの善を素直に受け取ることができず、すべてを銭に換算して、きれいに精算してしまわなければ息もできなかった、私のこの醜いのあり方から。
「言うわ……全部、話すから」
私は震える唇をいた。
「延期なんてしないで。お願いだから……話すわ」
「……聞こう」
俊平は腕を組んだ。その表はく、歩も引く気配はなかった。
私はドレッサーのガラスのに散らばった、枚の細票を見つめた。
インクのれかけた、の男の名。
「そのは……」
言葉をから絞りすたびに、胸の奥底でずっと閉ざしていたい扉が、錆びた音をてて軋んだ。
「私が……学のときから、俊平さんと会うまでに付きってきた……元彼たちよ」
部のに、い沈黙が落ちた。
俊平の眉が微かにいたが、彼は何も言わなかった。ただ、信じられないものを見るようなややかなを宿した瞳で、私の次の言葉を待っていた。
「全員よ。私がこれまでので、お付きいしたことのある……全員」
「……全員?」
俊平がく繰り返した。
「全員に、同じ額を振り込んだというのか? なぜだ。
なぜそんな奇妙な真似をした?」
私は自分の胸元の、純のレースをく握りしめた。