"消された母親席" 第12話
結婚式会をにしてから、どれくらいのが経っただろうか。
剛が運転するは、く当てもなく、ただ静かにを流していた。
代は助席で、窓のに過ぎっていく景を、焦点のわない瞳でぼんやりと見つめていた。
やがては、のない公園の駐に静かにした。
エンジンが切られると、内は完全な沈黙に包まれた。
その静寂が、かえって代のをかき乱す。
これまでりと決でなんとか保っていたのダムが、ついに決壊した。
代のから、さな嗚咽が漏れた。
「うっ……」
最初はさな嗚咽だった。
しかしそれはすぐに、抑えきれない慟哭へと変わっていった。
代は両で顔を覆い、子供のように声をげて泣きじゃくった。
悔しい、しい、虚しい。
なぜ、どうして。信じてきたものが、全て砂ののようにもろく崩れっていく。
息子に裏切られ、嫁に踏みにじられ、自分のそのものを否定された。
その絶望がい涙となって、次から次へと溢れしてくる。
そんな代の肩を、剛は何も言わずにただ優しく抱き寄せた。
剛のきなが、震える背をゆっくりと何度もさすってくれる。
剛は、く落ち着いた声で代の元にささやいた。
「代、おは何も悪くない」
剛は、さらに言葉を続ける。
「悪いのは、母親の献を当たりだとい、その尊厳を踏みにじった、あの愚かな息子夫婦だ」
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代は、涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、首を横に振った。
「でも、私は母親として何か違っていたのかしら。優太をあんなに育ててしまったのは私の責任……」
剛は、い調で代の言葉を遮った。
「違っていない」
剛は、代の目を真っ直ぐに見つめて言った。
「おは、護師としてくの患者さんの命を救ってきた。そして母親として、優太のために自分の全てを捧げてきた」
剛の声には、妻へのいと敬が込められていた。
「千百万円以ものを、文句つ言わずに与えてきたんだ。おのに何つ恥じることなどない」
剛は代の濡れた頬を、そのゴツゴツとした指先で優しく拭った。
「恥ずかしいのはあのだ。親のをでしか測れない、の貧しいあのの方だ」
夫の力い言葉と揺るぎないが、凍りついていた代のをしずつ溶かしていく。
代は、震える声で夫に謝を伝えた。
「ありがとう。あなた……あなたがいてくれて本当に良かった」
ようやく代の涙が止まった。
嗚咽で赤くなった目を、真っ直ぐに夫に向ける。
その瞳にはもう、先程までの絶望のはなかった。
代わりに宿っていたのは、静かだが決して折れることのない、い決のだった。
剛は、代の両肩を掴み、真剣な差しで告げた。
「代、今から俺が言うことをよく聞いてくれ」
剛の顔は、戦いに赴く戦士のように引き締まっていた。
「あの子たちに、自分たちのいがどれほどの痛みをもたらすのか、骨の髄までいらせてやる必がある」
代は、静かに頷いた。
「ええ」
剛は、静に確認を求めた。
「まず、もう渡してしまったあのご祝儀。結局いくら包んだんだ?」
代は、し伏し目がちに答えた。
「百万円と言われていたけど……百万円、包んでしまったわ」
剛は、瞬絶句した。
「百万だと……」
しかし、剛はすぐに表を引き締めた。
「そんな、あいつらにくれてやる必は微もない。そして、以に渡した結婚資の百万円。これも全額返還請求する」
代は、驚きのあまり聞き返した。
「えっ……結婚資を返還?でも、そんなことできるのかしら」
代がためらいを見せると、剛は静に、しかし断固たる調で答えた。
「できる。あのはおをとして扱わなかった。つまり、贈与の提となる族としての信頼関係が完全に崩壊している。これは法に見ても、返還を求める正当な権利があるんだ」
結婚式が止になるかもしれない。
代の胸に、母親としての最のがちくりと痛む。
その瞬のためらいを、剛は見逃さなかった。
剛は代の顔を覗き込み、諭すように、そしてく言った。
「いいか代、よく聞け。あいつらは、おを『体育座りで分』と言った。