"消された母親席" 第7話
代は、おずおずと話に声をした。
「もしもし」
話の向こうの千の声は、これまでのたさが嘘のように甘く、猫撫で声だった。
「あ、お義母さん、今丈夫ですか?」
その自然な変化に、代は逆に警戒をめる。
何かよからぬ求をされるに違いない。
その予は、すぐに現実のものとなった。
千は、るい声で切りした。
「実は、ご祝儀の件でご相談がありまして」
代は、胸のざわめきを抑えながら答えた。
「ええ、もちろん。きちんと包ませていただきますわ」
千は、しも悪びれることなく、恐ろしい求をにした。
「それで額なんですけど、お義母さんには最でも百万円は包んでいただきたいんです」
百万円。
代はを疑った。
親族が包むご祝儀として、それはあまりにも常識れの額だ。
代は、驚きのあまり声を裏返らせた。
「百万円、ですか?」
千は、当たりだというようにるく返事をした。
「はい。だってお義母さん、今まで優太にたくさん援助してきてくださったじゃないですか」
千は、これまでの代の苦労を並べてた。
「教育費も、結婚資も、マイホームのも、活費の援助まで全部してくださったんですよね」
千の言葉には、謝の響きなど微もなかった。
それどころか、代のこれまでの援助を、まるで当然の権利であるかのように語る。
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その顔無恥な態度に、代は言葉を失った。
千は、さらに非常識な理屈を並べる。
「でしたら、私たちのに度の結婚式ですもの。これくらい盛にするために、しっかりとご祝儀を包むのが当然じゃないですか」
当然。
千百万円以ものを、をにして働いて息子に与えたその全容。
この嫁は「当然」の言で片付け、さらに百万円を求してくる。
代の胸の奥で、何かがプツリと切れる音がした。
りなのか虚しさなのか、もはや自分でも分からないが渦を巻いていた。
代が何も言えずにいると、千はさらに信じがたい言葉を続けた。
「あ、そうだ。もうつお願いがあるんですけど」
千は、弾むような声で残酷な宣告をした。
「結婚式当のウェルカムパーティーには、お義母さんは来なくていいですから」
代は、咄嗟に反論しようとした。
「ええ?でも、私は母親として……」
千は、たくその言葉を遮った。
「ですから、いいんです。あのは、私たちは友だけで気兼ねなく楽しみたいので」
千は、悪に満ちた声ではっきりと告げた。
「正直、お義母さんのような『の』がいると、みんな気を遣っちゃうとうんですよね」
の。
実の息子の母親が、の。
その言葉は、代のを「族」という輪のから完全に突き放す、残酷な宣告だった。
代はもはや反論する気力も失い、ただ無に答えた。
「……分かりました」
代はそれだけ答えると、静かに話を切った。
この夜、代から全ての報告を受けた夫の剛のりは、頂点に達していた。
剛は、リビングを苛たしげに歩き回りながら、りに声を震わせた。
「代、もうする必はない。あいつらは、おをづるとしか見ていないんだぞ」
剛の目は血り、激しいりに燃えていた。
「のだと?ふざけるのも概にしろ。おがいなければ、優太は学にもけず、結婚などのまただったというのに」
剛のりは、代自のりでもあった。
しかし代のは、それ以にい空虚さとしみに支配されていた。
代は、々しい声で夫をなだめようとした。
「でも、結婚式を台無しには……」
剛は、代の目のにち、その両肩をく掴んだ。
「まだそんなことを言うのか」
真剣な、そして痛切な差しが、代を射抜く。
剛は、言言噛み締めるように言った。
「代、よく聞け。あんな連のために、おがこれ以をすり減らす必はない」
剛の言葉は、代のにく突き刺さる。
「あんな侮辱を受けてまで、本当にあの結婚式にく必があるのか。もう度自分のに問いかけて、よく考えろ」
くべきか、かざるべきか。
母親としての最のを取るのか、それとものとしての最の尊厳を守るのか。
代のはつの選択肢ので激しく、そして苦しく揺れいていた。