"母の職場で死んでいた私" 第4話
となじり、私は「お母さんの操り形になるためにまれてきたんじゃない」「もう度とこのには帰らない」と鳴り返した。
そして卒業式の翌朝、私は母が起きるに、トランクつでをびしたのだ。 あのの、たい朝の空気。 玄関のドアを力任せに閉めたの、あのい属音。
母は、あの翌、会社へってそう言ったのか。 『んだものとってくれ』と。
「……でも」
私は震える声で割り込んだ。
「でも、さん。普通、事故でくなったなら、お葬式とか……そういうのがあるでしょう? 誰も確かめなかったんですか?」
私の問いに、さんは苦渋に満ちた表で顔を歪めた。
「確かめられるわけないじゃない……!」
さんの目が、赤く潤んでいた。
「あの、敏子さんは言ったのよ。『密葬で済ませた。顔も見たくない、骨も拾えなかった、これ以娘の名をさないでくれ』って……! 憔悴しきって、今にもを追いそうな顔をして社してきたに、誰が『葬式はどうした』なんて聞けるのよ!」
言葉がなかった。
母は、そこまで周到に周囲のを塞いでいたのか。 いや、周到だったのではない。 そのの母の絶望とりが、あまりにも本物に見えたからこそ、周囲は誰も踏み込めなかったのだ。
「それだけじゃないわ……」
さんが、掠れた声で続けた。 その線は、もはや母を憐れむものではなく、底れない恐怖を見るものへと変わっていた。
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「あのの……会社の互助会から、特別慰問がたのよ。規程にはなかったけれど、内部が掛けってくれて、本来は扶養族がくなったの慶弔しかないところを、特例として万円……敏子さんに渡したの」
母の背が、ビクッとねた。
「敏子さん、あなた、あの封筒を受け取ったわよね? 『娘の供養に使わせていただきます』って、部ので々とをげて……受け取ったじゃない!」
「違う……!」
母がを叩いた。
「私は断った! 最初は断ったのよ! いらないって、そんなもの受け取れないって何度も言ったわ!」
「でも、最は受け取ったでしょう?!」
さんの声が階段に響き渡った。
「おだけじゃない! その翌にあった、本州の果ての営業所への転勤話だってそうよ! あの、番社歴が浅くて独だった敏子さんが候補のだった。でも内部が『娘をくして傷しているを、縁もゆかりもない僻にばせるか』って、役員会でをげてに戻してくれたのよ!」
非常階段の空気が、さらに段、え込んでいくのが分かった。
転勤の取り消し。 特別慰問。
「それから……の規模な員削減のだってそうよ」
さんの唇が震えていた。
「事務部から名、希望退職を募ることになった、敏子さんの名はリストに入っていたの。
でも、当の課も部も、みんなを揃えて言ったわ。『津田さんは娘さんをくして、もう守るべき族もいない。この仕事まで奪ったら、彼女は本当にんでしまう』って……! だから敏子さんは残されて、代わりに、まだ幼い子供がいた別の輩が肩たたきに遭ったのよ!」
元のコンクリートが、ぐらりと揺れたような気がした。
私は、息ができなかった。 胸の奥を、たい氷の刃で抉られているようだった。
私が京で、アパートの狭い部でパンのをかじりながら、劇団の具作りに追われていたあの。 母は、方のこのさな品会社で、私の『』という免罪符をにまとい、守られていたのだ。
残業を免除され。 厄介な転勤を免除され。 リストラの刃からも庇われ。 周囲からの腫れ物に触るような同と、い配慮をに受けながら。
「……お母さん」
私のから漏れたのは、非難ですらなく、ただの乾いた吐息だった。
「それ……本当なの?」
母は、に突っ伏したままかなかった。 紺のスーツの背が、さく震えているだけだった。
「どうして……途で言わなかったの? 私はんでないって、どうして言も……」
「言えるわけないでしょう……ッ!」
母が、顔をねげた。 その目には、真っ赤な血った涙が溜まっていた。
「いつ言えばよかったのよ?! 最初のに、ただの喧嘩のはずみで『んだものとってくれ』ってっただけよ! あんたが『度と帰らない』ってびしてって、所のにも『美紀ちゃん見かけないね』って言われて、職でさんに『何かあったの?』って聞かれて……! カッとなって、ただ、あの子はもうんだのって、そう言っただけなのよ!」