"締め出された新社長" 第19話
シリンダーがを噛み、ブランケット胴が圧をかけ、排台に刷りがった印刷物が規則正しく積みがっていく。
だが、かつてのような賑やかさはなかった。 現をび交っていた職たちの鳴り声も、くだらない雑談も切消え失せていた。 聞こえるのは、唸る械音と、作業着の擦れる音、そして用の結束バンドを締め直す乾いた音だけだった。
痛の傷痕は、すでに全員の骨の髄まで染み渡っていた。
葉版からの損害賠償請求、千百万円。 来期以の受注量、割削減。 それは昨、神と奥田が血判を押すようないで持ち帰ってきた、酷極まりない現実の請求だった。
の町にとって、売の割を失い、千百万円の現を吐きすことが何をするか。 分からない社員はもいなかった。 今期ののボーナスは違いなく全額カット。昇の凍結。 によっては、来のを迎えるに、誰かがこのをらなければならなくなるかもしれない。
事務所の片隅で、若の営業が青ざめた顔でパソコンの数字を叩いていた。 現の女性パートたちは、いつもなら笑い声が響く休憩で、押し黙ったまま持参した弁当をに運んでいた。 恐怖とが、たい鉛のように全体を押し潰していた。
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だが、そこにはもう、に蔓延していた「誰かのせいにする空気」はどこにもなかった。 営業が現を罵ることも、現が営業の無謀を嘲笑うこともない。 自分たちが目を背け、先代の背に押し付け続けてきた「ツケ」が、ついに自分たちの元を直撃したのだということを、全員が痛烈に理解していた。
私は、の脇にめたの助席に、ノートパソコンとバインダーを広げて座っていた。 膝のには、昨夜遅くに神と奥田が連名で私のの窓越しに差ししてきた、つの類が載っていた。
つは、神が徹夜できげた「営業利益改善計画」。 葉版で失われる割の売を、田区や品川区の堅メーカーの取扱説やカタログの案件をで稼いで補填するための、臭い規拓リストだった。
もうつは、奥田が油にまみれたで引いた「程効率化および損耗率減案」。 版替えのを分縮し、インキの予備吐量を極限まで絞り込むことで、々の製造原価を百万円圧縮するという、職のプライドをかなぐり捨てた極限のコスト削減計画だった。
つの類の余には、何度も数字をき直した跡と、かすれたペンの跡がびっしりと残されていた。 誰かに言われて作ったものではない。 自分たちが潰しかけた会社を、自分たちのでかすために、のがプライドを削り落として絞りした、血の滲むような現実の防線だった。
コン、コン。
の運転席の窓が、慮がちに叩かれた。 見ると、総務経理の坂井が、いほうじ茶の入ったコップをにっていた。 こので、坂井の顔のシワは段とくなり、髪も目って増えたように見えた。
私はドアをけ、にた。 たいが、スーツの裾を激しく揺らす。
「社……お茶をどうぞ」
「ありがとうございます、坂井さん」
コップを受け取ると、指先から温もりがじんわりと伝わってきた。 坂井は、閉ざされたの通用をちらりと見やり、それから申し訳なさそうに線を落とした。
「……社内の揺は、収まっておりません。パートの何かは、所の主婦仲から『柳印刷が潰れるらしい』という噂を聞きつけて、今朝、私に『来のお料はますか』と聞きに来ました」
「何と答えましたか」
「『柳印刷は潰れません。社が、全責任を背負ってで戦っておられます』と、そう答えました」
坂井の声が、微かに震えていた。 初、父の命令に従って私のカードを酷に弾きした老経理の目には、いまやい悔と、私に対する揺るぎない敬が宿っていた。
「坂井さん」
「はい」
「午に、全社員を集めてください。階の荷、通用のガラス扉のに全員を並ばせてほしい」
「全社員を、ですか……?」
「ええ。パートも含めて、名全員です」