"締め出された新社長" 第17話
ガタガタと激しい音をてて、通用の自ドアがいた。 びしてきたのは、シャツ枚でネクタイを乱した神と、作業着の袖をまくりげたままの奥田だった。 は凍えるような寒のに放りされ、のベンチに腰掛ける松井専務の姿を見るや否や、完全に腰が抜けたようにそのでちすくんだ。
「専、専務……!」
神の顔は気を通り越して蝋のようになっていた。 奥田も唇を震わせ、インキで汚れた両を胸ので固く握りしめている。
「神。奥田」
松井専務は座ったまま、氷のような声でを呼んだ。
「そこへ直れ」
は操り形のようにぎこちない取りでみて、ベンチののたいアスファルトのに、崩れ落ちるように膝をついた。
「も、申し訳ございませんでした……!」
神が額を面に擦りつけた。
「すべて、私の浅慮でした! 納期を守りたいで、あんな流に……! どうか、どうか会社だけはお許しください! 社も先代も関係ありません、私のクビを差しげますから……!」
奥田もまた、震える拳を面に突き、掠れた声で叫んだ。
「俺が……俺がを張って、械を止めちまったのが発端です! 神だけのせいじゃありません! 俺が……俺が馬鹿だったんです!」
のが、ので、洟をすすりながら座をしていた。
広告
通りがかりの隣民が、驚いたように巻きにこちらを見ている。 かつて先代の威を背に受けて、請けの印刷としてプライドく振るっていた幹部たちの、これが無残な実態だった。
私は彼らの横にち、切の助け舟をさなかった。 胸が張り裂けそうだった。今すぐ「専務、もうこれくらいで」と割って入りたかった。 だが、ここで私が庇えば、彼らは度とちがれなくなる。私は唇を血がにじむほどく噛み締め、ただ徹にち尽くした。
松井専務は、座するの頂部を、たい目で見ろしていた。
「神。おは『会社のためにやった』と言ったな」
「は、はい……!」
「嘘をつくな」
松井専務の容赦のないが、寒空に響き渡った。
「おが守りたかったのは会社じゃない。お自の評価だ。『先代がいなくなっても、俺の腕で葉版の案件を守り切った』という、浅ましい柄が欲しかっただけだ。だからち会いもせず、品質の確認もせず、の粗悪な械に版権データを放り投げた。……違うか!」
神の肩が、ビクッとねた。 反論はなかった。喉の奥から、ヒック、ヒックと醜い嗚咽が漏れるだけだった。
「そして奥田」
松井専務の矛先が、職のへと向けられた。
「おは、隆のろで油にまみれてきた職面をしているが、その実、ただの臆病者だ。
のみがミクロン違った? そんなもの、おの腕ならどうとでも調できたはずだ。おはただ、『自分の判断で刷って、もし失敗したらられるのが怖かった』だけだ。責任から逃げるために、培った技術を質にしてサボタージュを決め込んだんだ。……恥をれ!」
奥田が、アスファルトので歯をいしばった。 ボロボロと、粒の涙がコンクリートの染みとなって広がっていく。 、誰からも叱責されたことのない「の神様」が、初めて自らの卑さをのに晒された瞬だった。
「聞きなさい、とも」
松井専務は懐から万を取りし、私がいた事故報告の末尾に、サラサラと力い跡で何かをき殴った。
「柳印刷には、千百万円の損害賠償を請求する。来期の仕事も割削る。……そして来週曜の午、葉版の役員会議に、おたちが来い。今ここで流した無様な涙ではなく、なぜ自分たちが過ちを犯したのか、これからどうやってその穴を埋めるのか、論理な言葉で説してみせろ」
松井専務は報告を神ののに放りした。
「言い訳は聞かん。逃げたらそので、柳印刷との全取引を永久に打ち切る。……分かったな」
「は……はい……! 必ず……必ず伺います……!」
神が震えるで報告を抱きしめた。
奥田もまた、涙でぐしゃぐしゃになった顔をげ、絞りすように「申し訳ありませんでした」とをげた。
松井専務は度とを見ようとせず、ちがってクラウンの部座席へと向かった。