"締め出された新社長" 第14話
「座れ」
「失礼します」
私はベンチの端、専務からメートルほど距を空けて腰をろした。 の朝の気が、スボンのを通して容赦なく太ももをやす。 向かいの柳印刷の階、事務のブラインドがわずかに揺れていた。社員たちが窓に張り付き、恐怖に震えながらこちらを見ろしているのが分かった。 業界の鎮が、社をのベンチに呼びし、たいので缶コーヒーをませている。 社員たちから見れば、それは公処刑の触れにしか見えないだろう。
「それで?」
松井専務が缶を握りしめたまま、を見据えて言った。
「神が刷らせたゴミの現物はどこにある」
私は元に置いていたビジネスバッグから、昨夜持ち帰った冊の画集を取りした。 さらに、昨夜からので徹夜できげた、A4用枚の「事故報告」を添えて差しした。
「こちらが現物です。それと……速印刷で使用されたインキの成分推定、乾燥程の備によるブロッキングの発状況、および今回の全数良に至った経緯をまとめた報告です」
松井専務は報告を受け取ると、老鏡を取りし、無言でページをめくり始めた。 ペラリ、ペラリとが擦れる音だけが、寒のに響く。 専務は画集の表をいた。ベリッと剥がれるな音がし、群青のインキが引きちぎれる。
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カラー図版の横シマ、濁った赤、波打った用。 その惨状を、専務は眉毛ひとつかさずに見つめていた。
分。 永のようにい沈黙だった。
報告を読み終えた松井専務は、それを几帳面に折りたたみ、膝のに置いた。
「よくけている」
予の言葉だった。
「社ので起きた事故の程分析を、わずか晩でここまで正確に割りすとはな。のみの誤差から始まって、神の焦り、奥田の職務放棄、の杜撰な輪転のスペックまで、切の自己弁護なしに淡々と事実だけが並べられている。……の社が泣きついてきた言い訳の報告とはの差だ」
「技術な数値は、私が以勤めていた印刷会社での見と、奥田が過に残した作業報のデータを照して算しました。……ですが、どれほど詳細に原因を分析しようと、結果は変わりません。の朝、葉版様の文芸フェアに、この画集を納品することは能です」
私は喉の奥から絞りすように言った。
「契約に基づき、受託額の全額返、および製代の全額補償をさせていただきます。また、遅延損害についても、葉版様の規定に従い、全額を括でお支払いする用をめております。……すべて、弊社の過失です」
平伏するような私の言葉を、松井専務はややかに聞き流していた。
専務は缶コーヒーをもうみ、くの摩川の堤防の方を見つめた。
「直君。君の親父――隆はな、先週の曜に私の自宅に来たよ」
息が止まりそうになった。
「父が……ですか」
「ああ。『今週いっぱいで引退する』と言って、桐箱に入ったい酒を持ってきやがった。、度もをげたことのない男が、私ので畳に額を擦りつけてな。『直をよろしく頼みます』と酒を注いできた」
松井専務の横顔に、苦い笑みが浮かんだ。
「その席で、親父は自げに語っていたよ。『自分は引退するが、直には最初の試練を与える。週、会社から締めして、社員だけで会社を回させる。これでうちの社員も目を覚ますだろう』とな」
「……っていたのですか」
「私はそので、隆を鳴りつけて追い返したよ」
松井専務の声が、突如としてく、たく研ぎ澄まされた。
「『馬鹿野郎、おはどこまで傲なんだ』とな」
専務はベンチの背もたれに体を預け、吐き捨てるように言葉を続けた。
「親父は自分が全能の神だと信じ込んでいたんだ。自分が本の腕とを操り、町をここまで育てげたという自負に酔っていた。だから最の産として、『全能の神がったの混乱』を社員にプレゼントしてやろうと考えたわけだ。ショック療法? 社員の自? 笑わせるな」
松井専務の線が、私を射抜いた。
「銃の撃ち方も教えられていない兵から、いきなり官が逃げして、敵の砲のに放りすことを『自』とは呼ばん。