"締め出された新社長" 第7話
には、自宅の物置から引っ張りしてきた折りたたみ式のパイプ子と、コンビニの温かい緑茶のペットボトル。 通用の根がわずかにせりしているの、アスファルトの隅に子を広げて腰をろした。
昨、喫茶で父のを読んだ、私は夕方までそのをかなかった。 夜になって通用のカードリーダーに社員証をかざしてみたが、吐きされたのはやはり酷な赤信号のエラー音だった。 父の志は微も揺らいでいない。 ならば、逃げ隠れするように向かいの喫茶にを潜めるのはやめようと決めたのだ。 社が締めされているという無様な現実を、社員たちの目に晒す。逃げのない境界線のに、私自が杭のように突き刺さってやる。そう覚悟を決めていた。
分。 最初に勤してきたのは、古株の製本オペレーターの田所だった。 自転をめた彼は、通用の脇にパイプ子を置いて座り込んでいる私を見て、ギョッとしたようにを止めた。
「し、社……? そんなところで、何をされているんですか」
「おはよう、田所さん。気にせず入ってくれ。今からし、ここで仕事を見ることにしたんだ」
私ができる限り平静を装って笑いかけると、田所は引き攣ったような笑いを浮かべた。
「は、はあ……お疲れ様です」
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彼はカードをかざしてへ入っていったが、自ドアが閉まる直、私を見るその目にはらかな揺と、底れぬ気悪さが滲んでいた。
半を過ぎると、勤ラッシュが始まった。 パートの女性たち、製版の若いスタッフ、の職たち。 誰もが通用ので私を見つけ、息を呑み、居悪そうに会釈をして通り過ぎていく。 ガラス扉の向こうに入った瞬、彼らが振り返り、ひそひそと囁きっているのが背越しに痛いほど伝わってきた。
「やっぱり本当だったんだ……」 「先代と喧嘩して、勘当されたんじゃないの?」 「社のデスク、片付けられてるらしいよ」
遮音性のい複層ガラス越しであっても、彼らの線のが言葉を雄弁に物語っていた。 侮蔑、同、困惑、そして組織の頂点が能全に陥っていることへの拭いがたい恐怖。
だが、私はパイプ子からとうとはしなかった。 膝のに帳を広げ、勤してくる社員の顔と名、その表をひとり記録するように見つめ続けた。
午分。 の裏にあるスチール製の皿のに、作業着の胸元をはだけさせたの奥田が姿を現した。 奥田は柳印刷の技術の臓部だ。代半ば、指先はいつも落ちないインキで青黒く染まり、先代隆とにわたって鳴りいながら町を支えてきた現の主(ぬし)だった。
奥田は袋をすと、震える指先でショートピースにをつけた。 煙を吐きしながら、通用のに座る私を忌々しそうに睨みつけている。
私はちがり、コートのポケットにを突っ込んだまま、裏の喫煙スペースへと歩み寄った。
「奥田さん」
奥田はタバコをくわえたまま、線を逸らさなかった。がポロリとコンクリートに落ちる。
「……何の用です、社。見ての通り、現は今それどころじゃないんですよ」
「昨のことだ。用のみがミクロン違っていた件、なぜ刷りを止めた」
私のストレートな問いに、奥田の眉のシワが気にくなった。 彼はタバコを携帯皿に押し込み、吐き捨てるように言った。
「が違えば、網点の太り方が変わる。インキの吸い込みも変わる。そんなの当たりでしょうが。先代なら、あんなを納入してきた製の営業をそので鳴りつけて突き返してましたよ」
「だが、今回は葉版の特急案件だったはずだ。製会社に突き返して再納品を待っていたら、納期ににわないことは現のあなたなら分かっていたはずだ。ミクロンの誤差なら、湿しの量を絞って、ブランケット胴のパッキングを枚抜けば吸収できたんじゃないのか」
奥田の目が、わずかに見かれた。 私が印刷の現程を正確に把握していることに、瞬だけ虚を突かれたようだった。