"締め出された新社長" 第4話
その決定に嘘はない。登記も変えたし、株の譲渡続きもめている。おは法に、違いなく柳印刷の代表取締役社だ。
だがな、直。 俺は引退を決めた先週、ぶりに会社の過の決定伝票をすべて見直した。 そして、背筋が寒くなった。
過、この会社でされた「決定」の割分に、俺の印鑑が押されていた。 印刷のの最終決定、の仕入れ先の変更、パートのを円げるかどうか、営業の交通費の精算、果てはの蛍灯をLEDに変えるかどうかまで、全部俺が決めていた。
おもっている通り、うちの社員は優秀だ。 奥田の印刷技術は本だし、神の営業力も申し分ない。坂井の経理も完璧だ。 だがな、彼らは、「決める」という作業を度もやってこなかった。 問題が起きれば俺の部に来る。 客にられれば俺を連れてく。 械が壊れれば俺に判断を仰ぐ。 社員の誰かがインフルエンザで休むことすら、俺に話してきて指示を待つ。
柳印刷は、の会社じゃない。 「柳隆というつの巨な脳」と、「それにぶらがった本の腕や」だったんだ。
直、おはこの会社に戻ってきてからの、真面目にやってきた。 俺のろを歩き、俺のやり方を学び、俺と同じように社員に指示をそうとしていた。
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だが、それではダメなんだ。 おがからあの社の子に座れば、社員たちは堵するだろう。 「ああ、しいお父さんが来てくれた。これで今まで通り、何も考えずに言われた通りにけばいい」とな。
それでは、この会社は持たない。 俺という怪物が退した今、組織そのものがまれ変わらなければ、柳印刷は確実に潰れる。
だから、おは週、会社に入るな。 歩も敷内にを踏み入れるな。 これはおのテストではない。 社員に、「社がいない世界」を制に体験させるための、ショック療法だ。
おがから何を見るか。 そして、いつ、どのようにしてそのドアをけるか。 それを決めるのが、おの最初の仕事だ』
を持つ指先が、刻みに震えた。
「ショック療法……?」
私は掠れた声で呟いた。 向かいに座る坂井が、申し訳なさそうに線を落とす。
「坂井さん、あなたはこの内容をっていたんですか」
「……全部ではありませんが、先代の図は伺っておりました。『社員を度、底なし沼に放り込め』と」
「無茶苦茶だ!」
私はわずテーブルを叩いた。カップののコーヒーが揺れ、茶い波紋が広がる。
「会社を何だとっているんだ! の活がかかっているんだぞ! いきなり梯子をして、現が自できるわけがないだろう! 現に今朝だって、械がいていないじゃないか!」
「はい……」
坂井は青ざめた顔で頷いた。
「現は、パニックになっております」
「何が起きているんですか」
坂井はくため息をつき、の惨状を語り始めた。
「朝番、奥田が社にび込んできました。今の午に刷りしをしなければならない、カタログの表案件です。製メーカーから届いたコートのみが、指定よりもミクロンいと」
「ミクロン……?」
「はい。印刷の品質には、素目にはまったく分からないレベルの差です。ですが奥田は『先代なら、このは突き返したはずだ。だが社がいないから、刷っていいのか返品すべきなのか判断がつかない』と、械を止めてしまいました」
「刷ればいいだろう! ミクロンくらい、インキの粘度と圧力を微調すれば現の技術でいくらでも吸収できる!」
「それを……誰も決められないのです。奥田は『もし刷りがってから客にクレームを言われたら、誰が責任を取るんだ』と言い、営業部の神さんは『今に刷らなきゃ納期ににわない、刷れ』と鳴りいになり……」
痛がした。こめかみのあたりがズキズキと痛む。 父の言う通りだった。 先代がきていた頃なら、奥田は迷わず社に来て、「社、がミクロンいです」と言ったはずだ。 そして父は「バカ野郎、それくらい腕でカバーしろ、刷れ! 文句がたら俺がをげてやる!」
とし、それで全ては解決していた。