"妻の手術翌朝、七通の解約通知" 第21話
真由美は、並べられた項目を見つめていた。その瞳が、微かに揺れていた。
「……直さん。これ、簡単に元に戻るようなものじゃないのよ。さっきも言った通り、お父さんの枠は……」
「分かっている。坂井ケアマネジャーに説教されたよ。最でも週かかるとな」
私は帳をき、来週のスケジュール表を広げた。
そこには、私が自らのでき込んだ予定が並んでいた。
「来週の曜の午、休を取った。坂井さんと実で面談をする。親父の認能の再調査に、俺がち会う」
真由美が目を見張った。
「休を? あなた、来週は半期の初めで……」
「仕事の調ならつけた。に権限を委譲したよ。俺がなきゃいけない会議は午に詰め込んだ」
私は帳を指でトントンと叩いた。
「これからは、親父の介護の第連絡先を俺にする。ケアマネジャーとの毎の面談も、連絡ノートの記入も、すべて俺の管轄にする。実のお呂の介助もだ。曜と曜の朝、おがパートにっていたんだろう? これからは、曜の午に俺が実へって親父を呂に入れる。専の訪問入浴を自費で再できるかどうかも含めて、来週、坂井さんと母さんとで費用を再計算する」
「……あなたの、ゴルフはどうするの」
「やめた」
私は即答した。
「先ほど、メンバーズコースのロッカー引き払いの話を入れた。
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に数万浮く。その浮いたで、親父の訪問入浴の自己負担分を賄う。りない分は、俺の遣いを万まで削れば済む話だ」
真由美の唇が、さく震えた。
「そんなの……急に活を変えたら、あなたが持たないわ」
「持たせるんだよ」
私は声をくした。
「おは、この活を何もで持たせてきたんだろうが。俺がでできない理がない。……それに、つ目の健太の学だ」
私はもう枚の申請をテーブルにした。
「午に区役所で民票を取って、夕方までに桜丘学の職員へく。会社の職証も、今朝、総務に頼んで子発してもらった。引き渡しカードの第連絡先は、俺の名義義刺で登録する。学からの緊急連絡は、私の社用携帯に直接入れさせる」
「でも、仕事に話にられないって……」
「るんだよ。部の話にて、息子の学の話にられないなんて言い訳、輪際通用しない。事の際に迎えにく責任を、俺が引き受ける」
真由美は息を呑み、テーブルののノートを見つめ続けた。
彼女のが、かすかに震えていた。
「……保険はどうするの。私のガン特約、もう回審査を受けたら、今回の術の告義務があるから、すぐには再加入できないかもしれないわよ」
「保険会社の同期に相談した」
私はつ目の項目を指差した。
「今回の胆嚢ポリープが良性であれば、術半からで条件付きで引き受けてくれる共済や特約がある。そののリスクは、俺の保障を減額したままで浮いた保険料を、医療用の緊急予備資として別座にプールして備える。そして、何より……」
私はノートを真由美のへ押しした。
「がの計座の暗証番号と、すべての固定費の内訳を、この冊目のノートに全部記録して共する。おがで『を着も買わずに』穴埋めするような計は、今で終わりにする。りないなら、どこを削るかで話しって決める。おにで『削る責任』を背負わせない」
真由美の瞳から、ポロリと筋の涙がこぼれ落ちた。
彼女は慌てての甲でそれを拭ったが、次から次へと涙が溢れし、のカーディガンの膝のに染みを作っていった。
「……どうして」
真由美は掠れた声で、絞りすように言った。
「どうして、もっとく……そう言ってくれなかったの……」
その涙は、謝の涙ではなかった。
堵の涙でもなかった。
、誰にも頼れず、で歯をいしばり、夫の嫌に怯えながら、族というシステムを維持するためにすり減らしてきた、彼女の孤独な歳のみそのものだった。
「ごめん」
私のからた言葉は、それだけだった。
どれだけ言葉をねても、彼女が流してきた過の涙を帳消しにすることはできない。
「ごめんな、真由美」
静まり返ったリビングで、真由美はしばらくの、両で顔を覆って声を殺して泣き続けた。