"妻の手術翌朝、七通の解約通知" 第10話
、親権や監護権を巡る庭内トラブルが増加しておりまして、教育委員会の指導により、厳格な類確認が義務付けられているのです」
またしても「民票」だ。
真由美が病で言っていた言葉が、脳裏をかすめる。『役所の窓に並び、民票を取り……』
「それに……」と教諭は類の片隅に貼られた付箋に目を落とした。
「度までの引き渡しカードを確認したのですが、緊急連絡先の第順位はお母様、第順位はお母様のご実のお兄様になっております。お父様のお名は、特記事項の欄に『は業務忙につき原則連絡』と記載されておりますが……」
胸を突かれた。
「……私が、は会議がく、話にられないため、妻がそういたのでしょう」
「様ですか。引き渡しカードというのは、震災や凶悪事件が発した際、徒の柄を直接引き渡す責任者を指定するものです。形式な登録ではなく、実際に学からの緊急請に応じられる方でなければをなさないのです。お母様が入院であるならば、お父様が第順位になられるのは当然ですが、そのためには規定の用に会社のによる緊急連絡先証、または職証を添付していただく必がございます」
企業の部である私が、自分の息子の学に「私はこの子の父親であり、事には責任を持って迎えに来られます」
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という証を、会社にをげて発してもらわなければならない。
社会としての私の肩きは、庭の全保障の現においては、何のろ盾にもならないどころか、むしろ「庭にの」としての枷でしかなかった。
「……類を揃えて、直します」
「本の受付は午半までとなっております。それを過ぎますと、学期の始業式以の登録となり、それまでの、緊急の健太君の引き渡しは保留、内待となりますのでご承ください」
職員をて、を抜けた、の差しがひどく眩しく、たくじられた。
に乗り込み、ハンドルに額を押し当てた。
何もんでいない。
午を丸々使い、会社での信用を危険に晒し、り回った結果、得られたものは「週の介護空」と「息子の学での払い」だけだった。
残るは、マンションの械式駐の利用契約だ。
管理事務がくのは、曜と曜の午からまで。
はちょうど午を指していた。
更続きには、管理組規定の申請、最の検証のコピー、そして民票と実印が必だと言われていた。
「……に、帰るしかない」
民票の予備があるかどうかは分からない。だが、のダッシュボードを探しても検証は見当たらなかった。おそらく真由美が、盗難防止か何かの理由で自宅に保管しているのだろう。
実印のありかも、度も自分で把握したことがなかった。
私はをらせ、豊洲のタワーマンションへと向かった。
普段なら、平の真っ昼に自宅へ帰ることなどあり得ない。
見慣れたタワーマンションのエントランスを抜け、エレベーターで階へとがる。内廊の静寂が、どこか気にじられた。
子キーをかざして玄関のいドアをける。
「……ただいま」
無識にからた言葉は、静まり返った玄関のたたきに吸い込まれて消えた。
靴箱には、私の革靴と息子のスニーカーだけが並んでいた。真由美のパンプスやスニーカーは、入院用のスリッパ以すべて然としまわれているはずなのに、玄関全体が奇妙なほど広く、え切って見えた。
リビングのドアをける。
カーテンがけ放たれたリビングには、の柔らかな差しが差し込んでいた。には埃つ落ちておらず、ダイニングテーブルのには輪染みつない。
あまりにも完璧にえられたその空にを踏み入れた瞬、私は背筋に微かな悪寒を覚えた。
活がないのではない。誰かのによって、極限まで「摩擦」を排除された空だったのだ。
私が夜遅くに帰宅し、脱ぎ散らかした靴は翌朝には洗濯され、サイドボードのに放り投げた領収はいつのにか計簿に清算され、蔵庫には常にえた麦茶とビールが補充されていた。