"妻の手術翌朝、七通の解約通知" 第8話
(……ふざけるな)
ここで会社を放りすわけにはいかない。だが、元の活を放置すれば、今夜帰るも、をめる所も、からの親父の居所すら失われる。
私は親指を激しくかし、へ返信を打ち込んだ。
【直:内に突発な医療事故にいトラブルが発した。本の役員会プレゼンはおが代理でて。構成はに入っているはずだ。数字の責任は私がすべて取る。本の残務はすべて任せる】
送信ボタンを押した瞬、指先が屈辱で震えた。
事な役員会でのプレゼンを部に譲る。世をひたってきた私のキャリアに、初めて確な汚点がついた瞬だった。すべては、真由美が「更」という名の些細なボタンを押さなかったせいだ。
「……たかが、切れの続きだろうが」
私はネクタイを乱暴に引きげ、病院のへと向かってで歩きした。
今に、最でも活の根幹に関わるつ——実の父親のデイサービス、息子の学の引き渡し登録、そしてマンションの駐利用権を自力で復旧させてやる。妻がいなければ何も回らない無能な夫ではないということを、現実の数字と結果で証してやるつもりだった。
だが、その傲な目論見は、最初の窓で々に砕されることになった。
をらせて分。
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実のある世田区の宅のれにある、平建ての古びた施設へと滑り込んだ。「世田桜丘・域包括支援センター」。入りには褪せた緑の板が掲げられ、自ドアをくぐると、独特の消毒液の匂いと煮干しの汁のような匂いがをついた。
カウンターの奥から現れたのは、代半ばとおぼしき柄な女性ケアマネジャー、坂井だった。名刺を差しす私のスーツ姿を、彼女は怪訝そうに見つめた。
「神直様……? ああ、清さんのご男様ですね。お話ではお話ししたことがありましたが、対面でお会いするのは……確か、の最初の介護認定の以来でしょうか」
「ええ、仕事が忙でして。平は内にすべて任していました」
私は努めて社会としての威厳を保ち、営業用のく落ち着いた声をした。
「今朝、母から連絡を受けましてね。来週からのデイサービスの予約がキャンセル扱いになっていると聞きました。何かの違いでしょう。更類が必なら、今ここで私がサインし、実印を押します。曜の迎えのは、予定通り実へ寄越してください」
私は鞄から級な黒のボールペンを抜き取り、カウンターのに置いた。
企業の取引先なら、この言で類の備など融通が利く。現のが形式にこだわり、顧客の利便性を損なうなど言語断だ。
しかし、坂井ケアマネジャーは類を取りすどころか、く、底のれないため息を吐きした。
「神さん。介護保険制度と施設の受入れ調は、宅急便の再配達依頼とは違うのですよ」
「……何ですって?」
「清さんは、昨のから認能のがみ、介護度が『2』から『3』へがりました。徘徊の頻度が増え、によっては者への帰宅願望がくて、職員がかりで見守りが必な状態です」
坂井はカウンターのから、分いのカルテを取りし、私の目のに広げた。
そこには、私のらない父親の姿が、無数のきの文字で克に記録されていた。
『〇〇:送迎内で暴言あり。利用者の鞄を自のものと誤認』 『〇〇:排泄の失敗により着交換。妻(母)の精神疲労が限界に達している模様』 『〇〇:男の嫁・真由美氏と面談。主介護者のレスパイト(息抜き)のため、・の入浴付きデイサービスを守したいとのい望あり』
「清さんが利用されていた曜と曜の枠は、入浴介助ができる専スタッフが配置される、域で最も気のい帯なんです。空きを待っているご庭が、今この域だけで世帯いらっしゃいます」
坂井は私の顔を真っ直ぐに見据えた。その瞳には、仕事にかまけて親の現実から目を背けてきた男に対する、隠しようのない軽蔑が宿っていた。
「真由美さんはね、この枠を維持するために、毎必ずこの窓に来られていたんですよ。