"十八年ぶりの切符「次は三人で来い」" 第19話
実で父に突き返された、美はがぶっていたため、裏面を確認することすらせずにバッグへと戻していたのだった。
そこには、震える跡で、こう殴りきされていた。
『次はで来い。汽代』
「あぁっ……!」
それを見た瞬、美のから堰を切ったような叫びが漏れ、再び涙が溢れした。
父は、が差しした万円を拒絶したのではなかった。
娘の夫からの好を度は突き返す形を取りながらも、そのを丸ごと、『次は族でこのへ帰ってくるための旅費』として、そのまま夫婦に返してきたのだ。
自分からは決して「帰ってこい」とは言えない頑固な父が、の用した封筒と言葉を借りて、ぶりに娘の族全員を故郷へと招き入れてくれたのだ。
は封筒を両でく握りしめ、ボロボロと涙を流しながら、何度も力く頷いた。
「こう、美。でこう。今度は必ず、でお義父さんに会いにこう」 「うん……! うん……!」
が居で抱きい、涙を流していたその、玄関の引き戸がガラリと勢いよくいた。
「ただいまー! 腹減ったー!」
きなスポーツバッグを肩に担ぎ、汗の匂いを漂わせた蒼太が、居へと威勢よく入ってきた。宿から帰ってきた息子は、居で両親が揃って目を真っ赤にして泣いている異様な景を目にし、履きかけの靴のまま固まった。
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「……えっ!? な、何? ともどうしたの? 喧嘩でもした?」
蒼太のあまりにも違いで無邪気な質問に、美とは顔を見わせ、涙を拭いながらわず吹きしてしまった。
「違うわよ、喧嘩なんかしてないわよ」
美がをすすりながら笑うと、蒼太は訝しげに眉をひそめ、テーブルのに散らばった写真の束に目を留めた。
「なんだこれ……? あ、これ俺の幼稚園のの写真じゃん! こっちは学のリレーのやつだ。なんでこんな昔の写真がここにあるの?」 「これね……おじいちゃんのに、全部切にしまってあったのよ」 「えっ、じいちゃんが? ……会ったこともないのに?」
蒼太は照れくさそうにを掻きながら、テーブルのの封筒に目をやった。そして、裏面にかれた文字を、指でなぞるように声にして読んだ。
「『次はで来い。汽代』……へぇ。じいちゃん、俺たちに来いって言ってるんだ。じゃあさ、いつくの?」
あまりにも屈託のない、真っ直ぐな息子の問いかけに、美とは再び顔を見わせた。
という歳のみをるたちにとって、帰省とは途方もない決をするものだった。しかし、過のしがらみを何つらない歳の息子にとっては、それは単なる『おじいちゃんからの招待』でしかなかったのだ。
「そうだな……」
が優しく微笑み、蒼太の肩をポンと叩いた。
「お義父さんの体調がもうし落ち着いたら、来の、みんなでこう」 「ふーん、分かった。じゃあ俺、呂入ってくるわ」
蒼太は何の気負いもなく頷くと、タオルを首にかけて呂へと消えていった。
軽やかにっていく息子の背を見送りながら、美の胸には、の呪縛から完全に解き放たれたような、温かく穏やかなが満ちていた。
翌の夜、仕事を終えて帰宅したは、スーツを脱ぐのももどかしそうに、居にいた美に真剣な面持ちで切りした。
「美、お義父さんに話をかけてもいいか? 直接、の礼を言いたいんだ」
義父の犠牲といをった以、としてはでもく謝と謝罪を伝えたかったのだろう。その誠実な気持ちは痛いほど分かったが、美はし考え込み、静かに首を横に振った。
「さん、気持ちは嬉しいけど……今はまだ、やめておいた方がいいとう」 「どうしてだ? く伝えないと失礼だろう」 「お父さん、まだ退院したばかりで体も疲れてるし……何より、あのを私たちが読んだとったら、絶対にパニックになるわよ」 「パニックに……あんなに頑固ながか?」 「そうよ。に『渡さない』っていてあったでしょう? 自分がで助けたことがバレただなんて、あののプライドが絶対に許さないはずだもの」
美の言葉に、はハッとしたように目を見張り、それから納得したように苦笑いを浮かべた。