"十八年ぶりの切符「次は三人で来い」" 第17話
、のに横たわっていた『絶縁』という名のたい壁は、実は父と母が懸命に築きげた、娘を守るための防壁だったのだ。
だがその、箱の底をまさぐっていたのが、ピタリと止まった。
「……美、まだ何かあるぞ」
が引きしたのは、経劣化で黄く変した、通のい封筒だった。
その封筒の表側を見た瞬、居の空気が変した。
そこには、父の力い圧で、はっきりとこうかれていたのだ。
『君へ』
美宛てではない。夫である宛てのだった。
そして、封筒の裏面に記された付を目にした瞬、の顔からサッと血の気が引いていった。
『平成 吉』
の。
その付を見たは、まるでに打たれたかのように直し、封筒を握りしめたままけなくなってしまった。
「さん……? どうしたの?」
美が涙を拭いながら尋ねると、は青ざめた顔をゆっくりとげ、信じられないものを見るような目で美を見つめ返した。
「美……の、何があったか覚えているか?」
その問いに、美の臓がドクンと嫌な音をててねた。
の――それは、この夫婦にとって、庭が崩壊の危に瀕した、決して忘れることのできない暗黒の期だった。
当、は勤め先の仕事とは別に、学代の友に頼まれ、さな輸入代理の共同資者となり、連帯保証に名を連ねていた。
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しかし、その事業は軌に乗るどころか、友の放漫経営によってあっけなく破綻し、友は額の負債を残して蒸発してしまったのだ。
連帯保証だったのもとに、突然、数千万円という途方もない請求が突きつけられた。
は会社にられないよう奔し、親類や保険の解約でなんとか債務を理したものの、夫婦がマイホームを購入するために何もかけて必に貯めていた自己資は、完全に底をついた。
当、は現の建売宅の購入契約を結んだ直だった。
付はすでに支払い済みで、の残と諸費用を期までに支払わなければ、付は没収、さらに額の違約を支払って契約解除になるという、絶体絶命の窮に追い詰められていた。
りない額は、ちょうど百万円だった。
毎、仕事が終わると青い顔で策にり回り、夜遅くに帰宅しては居の畳にを擦り付け、『美、本当にすまない、俺のせいでもも全部めちゃくちゃだ』と泣いて謝り続けていたの姿を、美は今でも鮮に覚えていた。
その、美がどこからか面してきたのが、現百万円だったのだ。
は封筒を見つめたまま、震える声で呟いた。
「あの……おは俺に、こう言ったよな。『お母さんが昔から、私のために密かに貯めておいてくれたおがあるから、これを使って』って……」
美は息を止め、膝ので握りしめた指先にギュッと力を込めた。
はずっと、あの百万円は、き義母のが美のために遺してくれていたへそくりだと信じ切っていたのだ。美は夫のプライドを傷つけないよう、『母のおだから、気にしないで』と笑顔で嘘をつき、現を渡したのだった。
はそののおかげで違約の獄を免れ、無事にこのをに入れることができた。それ以来、は義母に対してががらないほどのい恩義をじ続けてきたのだ。
「でも……この封筒の付は、おが俺に百万円を渡してくれたと、完全に致している」
の瞳に、激しい揺と疑が渦巻いていた。
「お義母さんのなら……なぜ、お義父さんから俺宛てのが、この付で残されているんだ?」
美は答えることができず、ただ唇を噛んで俯いた。
、美がに対して突き通してきた最の嘘が、今、のに晒されようとしていた。美はこののこそらなかったが、あの百万円の『本当の所』については、最初からすべてをっていたのだ。
父から『君には絶対に言うな』と厳命され、美はその言いつけを頑なに守り続けてきたのだった。
は震える指先を、封筒の糊付けされた部分にかけた。