みかん小説
本棚

"三十二人目の卒業写真" 第15話

……これ以、私たちの過を引っ掻き回さないでください」

野はに歩きり、度と振り返らなかった。

私はたいベンチのに、取り残された。 がく伸び、私の元に黒々としたを落としていた。

共犯者。 私が育てたのは、豊かな子供たちなどではなかった。 の保と制度の理尽に従順に従い、都の悪いを全員で「いなかったこと」にする、酷な共犯者たちだったのだ。 そしてその罪の識を背負わせ、同窓会のたびに虚構の絆を確認させ続けてきた。

諸悪の根源は、ならぬ私自だった。

が暮れかけていた。 たいが吹き抜け、のトタン根をガタガタと揺らしていた。

私は再び、あの自修理のにっていた。 の敷内には誰もいなかった。従業員たちはすでに帰宅したのか、事務所の粗末なプレハブの窓にだけ、ぽつんと裸球のかりが灯っていた。

い鉄のシャッターが、からセンチほどいていた。 から、ラジオのプロ野球継の微かな音声と、具を片付けるガチャガチャという属音が聞こえてくる。

私は腰をかがめ、シャッターの隙にをかけた。 たい鉄の触が、掌に痛い。

「藤君」

音をててシャッターをし持ちげると、作業の奥にいた藤がハッとして振り返った。

広告

ツナギのを払い、帰り支度をしていた彼のが止まる。

「……また来たのか」 藤の声には、もはや昼のような激昂はなかった。ただ、底なしの疲労と、諦が滲みていた。

私はのへを踏み入れた。 元には、黒ずんだオイルの染みが広がっている。 私は着の内ポケットから、あのい封筒を取りした。 昼、野から聞かされたすべての真実が、この枚ののみとなって私の腕を押しげていた。

「野さんから……全部、聞いたよ」

私の掠れた声に、藤はピクリともかなかった。 ただ、暗い灯のので、く唇を噛み締めていた。

「君がいたんだね、藤君。このを」

私は封筒を両で差しした。 藤はそれを見つめ、やがて自嘲気に元を歪めた。

「そうだよ」 く、はっきりとした声だった。

「俺がいた。あんたのあの、虫唾がるような退職祝いの袋に、俺のでねじ込んでやったんだ」

藤は作業台にをつき、肩を震わせた。 その瞳には、分のりと、そして耐え難い悔の涙がっていた。

「先。昨の壇で、あんたが『全員を無事に送りした』って胸を張った瞬……俺はな、目のが真っ暗になったよ」

藤の拳が、ギリギリと音をてて握り締められた。

「あんたはあの、葵のだけじゃない。あいつの尊厳も、あいつがきていた証も、全部ゴミ箱に捨てたんだ。

そして俺たちを、その片棒を担ぐ共犯者に仕てげた。……あんたを絶対に許さない」

のえ切った空気ので、教え子からの決定な断罪の言葉が、私の胸をく刺し貫いていた。

裸球の傘に溜まった埃が、すきまに微かに揺れていた。

油の焼けた匂いと、錆びた鉄の気が、備の狭い空に満ちていた。 藤は作業台にをついたまま、微だにしなかった。その首には黒い油染みがこびりつき、握りしめた拳の関節がく浮きがっている。

「……先」

藤がく、濁った声で呟いた。 振り向いたその瞳には、昼の気配とは違う、もっと暗くい疲弊のが湛えられていた。

「どうして、また来たんですか。野から全部聞いたなら、もう分でしょう。あんたがに何をやったか、俺たちがどんな顔であんたの嘘に付きってきたか、全部わかったはずだ」

私はにしたい封筒を見つめた。 暗い灯のので、封筒の端についた油汚れが、藤の指紋そのもののように見えた。

「藤君。……昨夜、私のに話をかけてきたのは、君だったんだね」

私の問いに、藤は答える代わりに、くで嗤った。

「国沿いの、あの古い赤話ですよ。トラックの音がうるさかったでしょう。あの同窓会の、どうしてもできなくてね。

あんたのあの、誇らしげな笑顔が……の職員の景となって、胃のが煮えくり返りそうだった」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: