"三十二人目の卒業写真" 第12話
私はちがり、着を引っ掴んだ。 昨夜配られた連絡先の名簿をく。 『藤自備 代表 藤健』 町の境界線にい、国沿いの寂れた業区の所が記されていた。
町れへ向かうバスの窓から、変わりゆく並みを眺めていた。 かつて田畑が広がっていた所には型のディスカウントストアやパチンコがち並び、造の平は姿を消していた。という歳は、あらゆる景を均質で気ないものへと塗り替えていく。 だが、その変化ので、取り残されたように佇む所もあった。
バスをりて分ほど歩くと、錆びついたトタン根のプレハブが見えてきた。 敷内には解体途の事故や使い古されたタイヤが積みにされ、いエンジンオイルと排気ガスの匂いがを突いた。
の奥、リフトで持ちげられた軽トラックので、作業着姿の男が仰向けになってスパナをかしていた。 属と属がぶつかりう、甲い乾いた音が響いている。
「……藤君」
私の声は、作業の音にかき消された。 私は歩を踏み入れ、オイルで黒く汚れたコンクリートののにった。
「藤君。……藤田だ」
スパナの音が、ぴたりと止まった。 のから、キャスター付きの寝板がゆっくりと滑りてくる。
起きがった男は、額に黒い油染みをつけ、首に巻いた汚れたタオルで汗を拭った。
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代半ばの、引き締まった頑丈な体躯。だが、その目元には、のあの寡黙なの面が濃く残っていた。
藤は私を見るなり、表を瞬にして張らせた。 驚きではなかった。まるで、来てはならない招かれざる客が、ついに踏み込んできたかのような、い警戒と拒絶のだった。
「……何の用ですか」
く、擦れた声だった。昨夜の話の声とは、し違うようにえた。だが、あの受話器の向こうで聞こえたロードノイズは、まさにこの国沿いののをる型の音そのものだった。
「急に訪ねてすまない。昨夜は、ゆっくり話もできなかったからね」 私はできる限り穏やかな、かつての担任としての声音を取り繕おうとした。
「仕事だ。見ての通り、忙しい」 藤は私から線を逸らし、ちがると、作業台のに無造作に置かれた布切れで指先を拭い始めた。その指の爪のには、黒い械油がく染み込んでいた。
「分でいいんだ。……昨夜の、同窓会のことでね」 「同窓会なら、もう終わったでしょう」 藤は背を向けたまま、淡に言い放った。
「先は派な束をもらって、みんなから謝されて、それで全部終わりだ。俺には関係ない」
「君が、あのを……」 私の言葉が宙に浮いた。
藤の背が、わずかにピクリとねた。 だが、彼は振り返らなかった。
具箱から別のレンチを取りし、再び軽トラックのエンジンルームに顔を突っ込んだ。
「何のことか分かりませんね。帰ってください。ここは客以のが入っていい所じゃない」
「藤君!」 「帰れって言ってるんだ!」
藤が突然、にしたレンチをの鉄板に叩きつけた。 ガアンッ、と凄まじい属音が狭い内に反響し、私の鼓膜を震わせた。
荒い息を吐きながら、藤が私を振り返った。 その目は血り、分の澱んだりが燃え盛っていた。
「あんたの顔なんて、秒も見たくないんだよ。昨だって、幹事に泣きつかれて顔をしただけだ。これ以、俺の邪魔をするな!」
それ以、言葉をねることは能だった。 私は歩ずさり、油の匂いが充満するから逃げるようにを踏みした。
背で、ガラガラとい音をてて、鉄製のシャッターが乱暴に引きろされた。 が遮断され、私と藤を隔てるたい鉄の壁だけが残された。
藤のあの激しい拒絶は何なのか。 彼があのの主であるという確信はまった。だが、確証はない。 そして何より、なぜ藤があそこまでの憎悪を私に向けているのか、その本当の理由が分からなかった。単に嘘をっていたというだけで、あそこまでを憎めるものだろうか。
私はい取りで駅へと戻りながら、名簿の別の名に目を留めた。
野恵。