"三十二人目の卒業写真" 第10話
「君は……っていたのか。あの、あの子が病気じゃなかったことを」
「っていましたよ」 宮田はあっさりと答えた。
「僕だけじゃない。保健委員の鈴だって、本当は々気づいていましたよ。あいつは朝、欠黒板に欠席者の名をく係だったんですから。先が職員から血相を変えてがってきて、『葵さんは休みだ、かなくていい』って指示したの、先のあの怯えたような目を見て、何もじない子供がいるといますか?」
私は言葉を失った。 完璧に欺いたとい込んでいたのは、私だけだったのだ。 子供たちは、の嘘の匂いを敏に嗅ぎ取り、そして空気を読んでを噤んでいただけだった。
「どうして……誰も何も言わなかったんだ」 私の掠れた問いに、宮田の元が皮肉そうに歪んだ。
「言えるわけないでしょう。先があんなに必になって隠そうとしているのに、歳の子供が『先、嘘をつかないでください』なんて言えるといますか? 波をてちゃいけない。先の顔を潰しちゃいけない。そうやっての顔を窺うのが、あの学でき残る子供たちの恵だったんですよ」
宮田は腕計に目を落とした。針は分を指していた。 彼はテーブルのに百円玉を枚置き、ちがろうとした。
「待ってくれ、宮田君!」
広告
私はわず彼のスーツの袖を掴んだ。
「あの子は……葵ちゃんは、そのどうなったんだ? 卒業式の、母親と緒に突然アパートを引き払っていなくなってしまった。私は……ずっと探していたんだ」
「探していた?」 宮田はち止まり、私のをたく振り払った。
「嘘をつかないでください。本当に探していたなら、教育委員会にも警察にも相談できたはずだ。自分のが危うくなるから、探すふりをして何もしなかったんでしょう。だから、度もその名をにしなかった」
反論できなかった。 彼の言う通りだった。私は探さなかった。彼女が消えてくれたことに、のどこかで堵してさえいたのだ。これで、あの都な真実は永にに葬られたのだと。
宮田は見ろすように私を瞥し、コートの襟を正した。
「先、あなたはさっき、あのの主を『あの子本』だとっているようなぶりでしたね」
「え……?」
「経って、かつて排除されたな女が、老いぼれた担任に復讐のを送りつけてきた……そうっていらっしゃるんでしょう? だから怯えている」
宮田の声に、底えのするような侮蔑が混じった。
「どこまでいがり配なんですか、あなたは。あの子がそんなこと、するはずがないでしょう。あの子はね、あなたに謝すらしていたかもしれないんですよ。
『学にいさせてくれてありがとう』ってね。それくらい、あの親子は追い詰められていたんだ」
私は息を呑んだ。
「じゃあ……あのは……」
「先、あなたはあの、あの子を職員の奥に隠して、それで自分の仕事は終わったとい込んでいた。あの子を『守ってやった』と、自分に都のいい免罪符を貼り付けて、教で記写真の真んに収まっていた」
宮田は顔をづけ、周囲の客に聞こえないほどのい、しかし鋼のようにい声で言った。
「あの、昼休み。全徒が庭で写真を撮り終わって、教で卒業祝いの饅を配られていた……職員の奥に、誰かがで忍び込んで、あの子に弁当を届けたやつがいたんですよ」
「……何だって?」
「あの子はで泣いていたんじゃない。あの子の泣き顔を、すぐ傍で、最初から最まで見ていたがいたんです」
私のので、何かが音をてて崩れ落ちた。 第者。 あの、あの部に、もう、別の徒がいた?
「そ、それは誰だ? 誰があの子のところに……」
宮田は答えず、ややかに背を向けた。 そして、喫茶の階段をがる直、振り返ることなく、決定な言葉を投げ捨てた。
「をいたのは、あの子じゃありませんよ。先、あなたは探す方向を完全に違えている」
ドアベルがカランと鳴り、宮田の姿はのへと消えていった。
残された私は、え切ったボックス席で、ただ呆然とち尽くしていた。 をいたのは、葵ではない。