"「会計は嫁」の還暦祝いと18万6740円" 第27話
「弁護士から送り付けられてきたからな。ふざけた内容だ」
義父は類を指差した。
「預1000万は折半。ここまでは百歩譲って許してやる。だが、このの査定額が1500万で、その半分の750万を現であいつに払えだと?俺にそんながあるわけないだろうが」
浩司が淡々と告げた。
「法律に則った当然の財産分与だ。親父が現で母さんの取り分を払えないのであれば、選択肢は1つしかない。を売るしかないな」
義父は目を見いた。
「バカなことを言うな。ここは俺のだ。俺が建てただぞ」
浩司は静に返す。
「名義が親父でも、結婚してから建てたは夫婦の共財産だ。現が用できないなら、売却して現化して分けるのがルールだ」
浩司の言葉に、義父はわなわなと震え始めた。
を売る。
それは彼が親戚ので保ってきた、本の次男としての派なという最の見栄を完全に失うことをしていた。
義父は子供のように首を振った。
「嫌だ。絶対に売らん」
そしてすがるような目で、浩司を見た。
「浩司、おが同居しろ」
義父のからびしたのは、あまりにも勝で狂気じみた提案だった。
「おたちがこのに移りんで、おが750万のローンを組んで美代子に払えばいい。そうすればは残る」
自分のを守るために息子の庭を借まみれにし、このゴミ敷での同居をしようというのだ。
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私はわず息をんだが、浩司の反応はややかだった。
「断る。絶対に同居なんかしない」
義父が叫ぶ。
「親を見捨てる気か!」
浩司は酷に返す。
「親父が俺たちを見捨てようとしたんだろう。言うことを聞かないなら婚しろって、正におが言ったんだ」
過の自分の暴言が、最悪の形でね返ってきた。
義父は言葉に詰まり、額に油汗を浮かべた。
義父はさらに求の形を変えた。
「じゃあ、じゃあ仕送りをしろ」
彼は訴える。
「を売ってアパートを借りるにしてもがかかる。もあいつに分割されるんだ。活できないだろうが」
義父はテーブルにを乗りし、浩司の顔を覗き込んだ。
「5万だ。おたちから毎ごまかし繰りしろ。エミさんも働いているんだから、世帯収入で考えれば痛くもない額だろう」
結局そこにき着くのだ。
自分が困ればの財布にを突っ込む。
しかも嫁が働いているから余裕があるだろうと、平然と私の労働を自分の活費として計算に入れている。
5のいつものようにという言葉の裏にあった傲さが、全く同じ構造で繰り返されている。
浩司は義父の目をまっすぐに見つめ返した。
「1円もさない」
くはっきりとした声だった。
義父の顔が絶望とりで引きつる。
「者め!自分たちだけいい暮らしをして、親がのたれんでもいいというのか」
浩司は歩も引かなかった。
「俺たちも余裕なんてないんだよ」
彼は事実を突きつける。
「親父がを使わせて親戚に見栄を張っていた5。俺がそのて替えをエミに押し付けていた分を、俺は今自分の遣いを削って返している最なんだ」
義父がハッと息をんだ。
浩司の言葉は完璧な引導だった。
「俺は今、自分の見栄の代償を自分で払ってる。だから親父も、自分の見栄の代償は自分で払え」
誰も親父を助けない。
誰も親父の借を肩代わりしない。
の財布を当てにする代は、完全に終わったのだ。
義父は糸が切れた操り形のように、どっしりとこたつに崩れ落ちた。
反論する気力も、鳴る体力ももう残っていなかった。
しばらくの、部には義父の呼吸音だけが響いていた。
やがて義父は震えるで、テーブルののボールペンをに取った。
婚届の署名欄に、乱れた字で自分の名をき込む。
そして引きしから実印を取りし、朱肉に押し当てた。
バンと乾いた音がリビングに響いた。
財産分与のにも同じようにハンコが押される。
これで義父のとしてのは法に完全に崩壊した。
は売却され、親戚からは絶縁され、妻には逃げられ、息子からの援助も断たれた。
残されたのはただの、見栄だけを抱えた1の老だった。
義父は類から目をそらし、テレビの方を向いて吐き捨てた。