みかん小説
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"息子の捜索地図を消す男" 第12話

……母親の君には残酷な宣告かもしれんが、現実を見なきゃいかんもあるんだよ」

現実。 この男がにする「現実」という言葉のグロテスクさに、胃が激しく波打った。

民捜索を打ち切れば、町の々は常に戻る。 や川を気にするはいなくなり、警察は形式な聞き込みとパトロールを続けるだけになる。 そして、野寺さんが「捜索完」と偽装した旧堤には、度と誰もを踏み入れなくなるのだ。

この男は、を稼ぎ切ったのだ。 捜索隊という名の目隠しを町全体に被せ、誰もが疑わないまま、幕を引こうとしている。

「さあ、遥さんもに帰りなさい」

野寺さんは私の背に優しくを添え、玄関のへと促した。

「今夜の会議には、君はなくていい。結果は私が話で伝える。君はで、あの子の帰りを祈っていればいいんだ」

背に触れるの平から、ぞっとするような悪寒がった。 私は抵抗することもできず、がりの湿った庭へと押しされた。

カチャリ、と背で玄関の鍵が厳に内側からかけられる音がした。

◇

通りにた瞬、私はの垣にをついて激しく吐き気を催した。 胃のには何も入っておらず、苦い胆汁だけが喉を焼いた。

ポケットのに突っ込んだが、たいプラスチックの塊を握りしめている。

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私は震える指で、それをポケットから引きした。

と傷にまみれた、黄いクマの反射マスコット。 裏返すと、油性マジックでいた格好な文字が残っていた。

『みうら ゆうと』

私がいた文字だ。 文字くたびに、隣で悠が「もっとにいてよ」と笑っていた、あののの景が鮮に蘇る。

違いない。 悠のものだ。

あの子は、あのにいた。 あるいは、野寺の誰かと、確実に接触したのだ。

指が震え、スマートフォンの画面をタップする。 発信ボタンのに親指を乗せる。 「110」。 今度こそ、警察に通報する。このマスコットを証拠として突きし、野寺のを宅捜索させればいい。

だが――。

画面を見つめたまま、親指がどうしてもかなかった。

警察が来たら、どうなる? パトカーがサイレンを鳴らして駆けつけ、野寺修を取り囲む。 野寺は何と答えるだろう。 『ああ、そのマスコットですか。昨、捜索の途で端に落ちているのを私が拾ったんです。お母さんに渡そうとって、うっかりポケットに入れたまま忘れていました』

それでおしまいだ。 拾得物の届けが遅れただけの、齢者の物忘れ。 警察が、町功労者である自治会の自宅を、令状もなしに制捜索できるはずがなかった。 「のため確認させてください」と形ばかりの事聴取をし、野寺は笑顔でそれに応じるだろう。

そして、警察が引き揚げた、何が起きる?

野寺は気づくはずだ。 私がすべてを察し、警察をかしたことを。 もし彼が、誰にも言えないな秘密を守るために悠をどこかに隠しているのだとしたら――追い詰められたが、最に何をするか。

『現の揺を防ぐため』 『言無用』

あのメモの酷な跡がをよぎる。

通報すれば、悠が消されるかもしれない。 証拠を完全に隠滅するために、封じをされるかもしれない。 悠がいま、どこで、どんな状態でいるのかもわからないまま、警察の鈍な続きに息子の命を預けることなど、絶対にできなかった。

所を突き止めなければならない。 野寺が警察に言い逃れをするに、悠の居所を特定し、こので連れ戻さなければならないのだ。

ふいに、くでエンジンの始音が響いた。

垣の隙から覗くと、野寺の自宅の扉がき、あのい軽トラックがゆっくりとにてくるところだった。 運転席には野寺修が乗っている。 助席には、役員会で配る類の入った袋が見えた。

トラックは交差点を折し、公民館のあるの方角へとりっていった。 計の針は、午を回ったところだった。 役員会はだが、会である彼は、事の根回しや警察との打ちわせのためにく向くと言っていた。

今、あのには――。 腕に包帯を巻いた、あのの孫がきりで残されている。

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