みかん小説
本棚

"残高220円の介護嫁" 第4話

千万円。

そして、このメモにある、約千万円という謎の残債。

すべてが、ひとつの気な輪郭を結び始めていた。

健は、母を失ったしみでここに来たのではない。

遺産を巡る親族の欲でいているのでもない。

この男は——何かに、背を焼き尽くされるような勢いで追い詰められている。

私はちがり、玄関の脇にある暗い納戸へと向かった。

そこには、健が過数にわたって「親孝の証」として送りつけてきた、級健康品の段ボール箱が、井に届くほど積みにされていた。

義母は、それらの箱に切を触れようとしなかった。

『美奈子さん、その箱をけてはいけないよ』

くなる半、まだ識がはっきりしていた夜、義母が私のを震える指で握りしめ、そう囁いたことがあった。

当の私は、ただの認症の被害妄だとっていた。

私は、番に積まれていた段ボール箱を引きずりろした。

表面には、名な老舗百貨の美しい包装が巻かれている。

だが、私は包装の隙に指をねじ込み、それを無残に引き裂いた。

から現れたのは、百貨の化粧箱ではなかった。

ただの、茶い無のクラフト箱。

そして、その底面に、剥がし忘れたように貼り付けられていた、枚の黄い配送伝票の控え。

私は息を呑み、埃まみれのそのさな文字に目を凝らした。

広告

ご依頼主:株式会社都ファイナンス・債権回収管理部 京都品川区反田丁目**** 品名:形・期管理類

百貨の包装のに隠されていたのは、親孝の滋養壮剤などではなかった。

反田にある、民融会社——いわゆる、ノンバンクの債権管理部から送られてきた、督促の類の。

「健さん……あなた、体何をしてるの……」

暗い納戸ので、私の呟きがたく反響した。

千万の借。

偽装された親孝。

そして、この千万円の価値がある古いマンション。

すべてのピースが、パズルの枠に恐ろしい音をてて嵌まり込んでいく。

だが、健はまだ決定なことを見落としていた。

彼が先ほど蹴にし、私が拾いげて仏壇に戻した、あの真鍮の鏧子。

そのい真鍮の底座の裏側に、義母が、誰にも見つからないように米粒の文字で刻み込み、古い布テープで封じ込めた『ある番号』があることを。

私はスマホの画面を伏せ、え切った畳の畳のに、もう度静かに腰をろした。

曜まで、あと。

私の本当の戦いは、今、この瞬から始まろうとしていた。

たいが、建て付けの悪いアルミサッシの隙から吹き込み、部の空気をわずかに震わせた。

私はちがり、まず玄関へ向かった。

健が荒々しくねじ込もうとしたドライバーの痕跡が、ドアノブの付け根にい引っかき傷となって残っている。

爪先でその傷をなぞると、細かな属が指の腹に付着した。

私は迷わずスマホを取りし、マクロモードでその傷のさを記録した。

、角度、属の剥具。

清掃の仕事で、建物の破損箇所を管理会社へ報として提する作業を、私は何千回と繰り返してきた。

を交えず、ただ客観な破損事実だけを淡々と写し取る。

その作業をしている、私のは奇妙なほど凪いでいた。

恐怖はなかった。

あるのは、という歳を『都のいい居候』として搾取され尽くしたことへの、底れない徹なりだけだった。

「曜まで、ね……」

私はさく呟き、居に戻った。

壁に掛け直しためくりカレンダーを見げる。

破られた更の奥に刻まれた、ボールペンの溝。

『残:38,800,000』

健のは、区役所の係クラスであれば取りで数万円程度のはずだ。

ボーナスを考慮したとしても、で自由にできるは百万に届かない。

それなのに、毎百万円の支払い。

そんなものが個の与から捻できるはずがない。

では、彼はどうやってそのを面してきたのか。

そして、なぜその返済期がかれたメモが、この部のカレンダーに残されていたのか。

私は、納戸のに積まれた段ボール箱へと戻った。

全部で箱。

健が「母さんのために取り寄せた特別な麗参エキスだ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: